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北九州市立八幡図書館

概要

北九州市立八幡図書館は、五市合併で北九州市が成立する前の八幡市時代に建てられた八幡市立図書館が前身で、現在も八幡東区の図書館として当時の建物が使われている。竣工は1955(昭和30)年、設計者は村野藤吾氏。八幡駅から延びる国際通り沿いには、同図書館の他に八幡市民会館、八幡信用金庫(現・福岡ひびき信用金庫)本店、平和ビル第1棟(現存せず)といった村野氏の建築が集中している。彼は青少年時代に八幡市で暮らしていて八幡製鉄所に勤務したことがあり、その地縁と実績から八幡市や地元企業が積極的に起用したのである。

八幡図書館の建物は鉄筋コンクリート造の地下1階、地上3階建て。鉱滓レンガと耐火レンガ貼りの壁面と柱・梁で立面をグリッド状に表現している。この手法は広島平和記念聖堂や横浜市庁舎等いくつかの村野建築に見られるが、三角形などの幾何学模様は珍しい。類似例は『村野藤吾建築案内』によると板谷生命ビル増改築(大阪市、1955・S30、現存せず)くらいだろうか。

内部のうち地階は機械室、1階は玄関やブラウジング ルームなどの他はピロティの割合が大きく、閲覧室、書庫、事務室といった主な機能は2~3階にある。インテリアに村野氏の特徴を見出すのは率直にいって難しい。階段の手すりも納まりは決して悪くないが、“階段の名手”といわれる彼にしてはシンプルだ。

なお、建物の老朽化と、隣地に建設される病院の用地確保を理由に、八幡図書館は移転した上でこの建物は2016(平成28)年を目途に解体される予定である。

データ

住所:福岡県北九州市八幡東区尾倉2-6-2
設計:村野藤吾
竣工:1955(昭和30)年
撮影:2007(平成19)年1月、2014(平成26)年1月

リンク

  1. 北九州市立八幡図書館 筆者が「建築マップ」に投稿した記事。より詳しく述べている。写真は本稿と同じ。

参考文献

  1. 『村野藤吾建築案内』村野藤吾研究会編、TOTO出版
  2. 『北九州地域における戦前の建築と戦後復興の建築活動に関する研究』尾道健二(九州共立大学工学部建築学科 教授)・内田千景(同 大学院生)・開田一博(北九州産業技術保存継承センター研究員)、北九州産業技術保存継承センター・九州共立大学、非売品

作成日:2010/11/3、最終更新日:2014/11/16

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