人車
概要
人車(じんしゃ)は炭鉱夫が坑道の中(坑内)を移動する際に乗る車両である。台車の上に簡易なつくりの座席と屋根を設置したもので、扉や窓ガラスもなく、基本的に座席は吹きさらし。いわゆるトロッコ列車の一種に該当する。閉山直前の池島炭鉱(長崎市池島町)で密閉型の人車が導入されたことはあるが、これは例外的な存在だ。
人車には斜坑用(写真01)と水平用(写真02)がある。炭鉱夫は斜坑という地上から地下に向けて斜めに掘られたトンネルを通って坑内に入るが、このときに乗るのが斜坑用人車で、傾斜に合わせて座席も傾いている。次に、斜坑の底部から採掘作業を行っている坑道の先端部まで移動する際に乗るのが水平用人車だ。人車を動かす方法は、斜坑用については地上の巻上機からワイヤーケーブルをつないで上下に動かす。端的にいえばケーブルカーである。編成のうち地上側末端には救急車(写真03)という車両が配置され、万一走行中にケーブルが切断して人車が逸走した場合は、カギ爪を枕木を引っかけて緊急停止する仕組みになっている。なお、念のため述べておくと「緩急車」の誤りではない。一方、水平用人車は電気機関車で牽引した。
田川市石炭・歴史博物館が所蔵する人車は三池炭鉱(福岡県大牟田市)から寄贈されたものだ。同博物館の屋外展示車両は全てグレーに塗られているが、これは比較的最近の塗り替えである。三池炭鉱三川坑に放置されていた人車(写真04)はブルーなので、これが三池炭鉱における本来の車体色と思われる。
【01】人車(斜坑用)
【02】人車(水平用)
【03】救急車
【04】三川坑の人車
データ
所在地:福岡県田川市大字伊田2734 田川市石炭・歴史博物館
撮影:2014(平成26)年2月
リンク
- NHK戦争証言アーカイブス > 日本ニュース第40号 石炭増産へ! 闘う採炭戦士 冒頭に斜坑口を出入りする人車が映っている
作成日:2014/9/23、最終更新日:同左